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『Rise: From One Island to Another - 立ち上がって 島から島へ』

キャシー・ジェトニル=キジナー+アカ・ニヴィアナ
訳:管 啓次郎

氷と雪のねえさん
私はあなたに近づいていきます
私の祖先の土地から
環礁、沈んだ火山たちから—-それは眠る巨人が
海面下に下降したもの

海と砂のねえさん
あなたを歓迎します
私の祖先の土地に
——かれらが自分の命を犠牲にして
私の命を可能にしてくれた土地へ
——生き延びた者たちの
土地へ

私はあなたに近づいてゆく
私の祖先たちが選んだ土地から。
Aelon Kein Ad 【マーシャル語で「私たちの島々」】
マーシャル諸島は
地面というよりも海でできた国。
私はあなたをKalaallit Nunaat
つまりグリーンランド
地球でもっとも大きな島に歓迎します。

氷と雪のねえさん、
こんな貝殻を持ってきました
ビキニ環礁とルニット・ドーム【核廃棄物を収容するコンクリート製のドーム】の海岸で
私が拾ってきたものです。

海と砂のねえさん
私がもっているこの小石はヌークの海岸のもの
私が故郷と呼ぶ島の土台です。

これらの貝殻とともに私がもってきたのは昔々の話
ウジャエ島に時のうちに固められたふたりの姉妹がいた
ひとりは魔法で石にされ
もうひとりはそんな姉のそばに
根を張る生き方を選んだ。
今日でもふたりの姉妹の姿を
珊瑚礁のへりに見ることができる、
永遠の教えとして。

これらの石とともに私が持ってきたのは
何度となく語られてきた物語
サッスマ・アルナー(海の母)の物語
彼女は大洋の底の洞窟に住んでいる。

これは海の守り手を
めぐる物語。
彼女は私たちの心に貪欲を、
私たちの目に敬意のなさを見る。
あらゆる鯨、あらゆる川、
あらゆる氷山は
彼女のこどもたち。

私たちが敬意に欠けるとき
彼女は私たちにふさわしいものをくれる、
尊敬のレッスンを。

私たちにふさわしいのは溶けてゆく氷?
飢えた北極熊たちが私たちの島にやってくること
あるいは巨大な氷山が怒りとともにこの海を打つこと
これこそふさわしいことなんだろうか
かれらの母が
私たちの家を奪い
命を奪うことが?

島から島へと
私は解決策を訊ねてまわる。
島から島へと
私は問題を訊ねてまわる
この潮の流れを見せてあげましょう
私たちが認めたくないほど
早く私たちを捕まえにやってくるそれを。
見せてあげましょう
水に沈んだ空港
ブルドーザーに均された珊瑚礁、砕かれた砂
それで新しい環礁を作るという計画
古代から存在する海、上昇する海に
むりやり陸地を作って
私たちに想像することを強いる
自分が石に姿を変えることを。

海と砂のねえさん、
私たちの氷河がうめき声を立てているの、わかりますか
世界の熱のせいで。
私はあなたを待っている
ここ、祖先の土地で、見つからない解決策に
心を重くして
この変化を
つづける土地を見つめているのです
世界はただ沈黙しているだけ。

氷と雪のねえさん
いま私は悲嘆にくれてあなたのもとに来ました
いつも変化を強いられてばかりの
風景のために悲嘆にくれて

最初はむりやり戦場にされて
ついで核実験の廃棄物が
捨てられた
私たちの水の中に
私たちの氷の上に
そしていま、これが。

海と砂のねえさん、
私はこの岩をあなたに贈ります、私の家の土台です。
私たちの旅にあって
このおなじ揺るぐことのない土台が
私たちをむすびつけ
強くしてくれますように
今日でも私たちの命を
自分たちの快楽のためにむさぼる
植民地主義者の怪物たちよりも。
それはいま
誰が生きるべきか
誰が死ぬべきかを
決めている、おなじ怪物たち。

氷と雪のねえさん、
この貝殻をあなたにあげます
ふたりの姉妹の物語とともに
それは証言
それは宣言
何が起きようとも私たちは
けっして立ち去らないという。
立ち去るのではなく
私たちは石を選ぶ。
この珊瑚礁に
永遠に
根付くことを選ぶ。

これらの島々から
私たちは解決策を求めるのです。
これらの島々から

私たちは求める
私たちは世界がもっと遠くを見ることを求める
レジャー用のでっかい車とかエアコンとか
できあいの便利さ、油を塗った夢、
明日何て来ない、こんなのは単なる
不都合な真実だと信ずる、その気持ちを超えて。
私の故郷をあなたの故郷へと連れてゆきましょう。
マイアミ、ニューヨーク、
上海、アムステルダム、ロンドン、
リオデジャネイロ、大阪が
水面下で必死に息をしようとしているところを
よく見ることにしよう。
あなたたちは家が潮に飲まれるまで
まだ何十年もあると思っているの?
せいぜい数年。
あるいは数ヶ月しかない。
あなたたちが私たちをふたたび犠牲にするまで
あなたたちが自分の部屋のテレビやコンピュータで
私たちがまだ息をしているかと傍観するその時まで。
何の行動も起こすことなく。

ねえさん、
島から島へと
私はこんな石をあげようと回ります
覚えておくために
私たちの命のほうがかれらの力よりも大切だと
あらゆるかたちの生命が
人がお金に払う以上の尊敬を求めているのだと
こうした問題は私たち全員に影響を及ぼし
誰もそれに無縁ではいられないのだと
そして私たちひとりひとりは
自分で決めるしかないのです
いまこそ
立ち上がるかどうかを

(訳:管啓次郎)

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