SIAFスクール

教育関係者コミュニティ

第3回教育喫茶 「クリエイティブ〜先駆者の教育実践〜」

開幕前から札幌国際芸術祭2024(略称:SIAF2024)を楽しむ「SIAFスクール」では、様々なプログラムを実施しています。今回は、教育とアートに関する課題や可能性を話し合うコミュニティ「教育喫茶」の様子をご紹介します。

気温31度という真夏日となった7月8日、札幌市資料館2階SIAFプロジェクトルームにて第3回「教育喫茶」を開催しました。この日は、普段教育に携わっている方やアートに関係する方など、オンラインと現地参加の方合わせて13名が集まりました。
今回は、SIAFスクールアドバイザー佐藤正範氏が店長(ファシリテーター)となり、「クリエイティブとチャレンジ」をテーマに、計6名の先生方による実践紹介が行われました。

・札幌南高等学校英語科教諭 澤田大輝先生
・北海道教育大学 佐藤正範先生
・北海道札幌養護学校 松本祥子先生
・大谷地小学校 大橋 剛先生
・澄川西小学校 小森量平先生
・新川小学校 小倉典彦先生

1人目は札幌南高等学校英語科教諭の澤田大輝先生。

澤田先生は、“つい自由にしてしまう仕掛け”を盛り込めないかと普段から工夫されているそうです。事例では、似た2枚の画像を並べ「留学先のアパートで外出中に強盗に入られてしまいました。ビフォーアフターの絵をみて英語で被害報告をしてください。」というテストが紹介されました。生徒ごとに多様な答えが返ってきそうなこのテストには「ストーリー」「必然性」「ボケ&ツッコミ余白」の3つが隠されており、これらがついクリエイティブな回答をしてしまう仕掛けとなっているそうです。

2人目は店長の佐藤正範氏(北海道教育大学)。

学校はプロを養成するためのもの?という問いからスタート。学校では楽しさや協働、文化、仕組みなどを学んでいるということを確認した上で、一見難しく思える内容であっても、児童に材料を預ければ発見する力や学ぶ力は十分にある、とお話されました。続けて、子どもたちの「難しい」を大人が決めてしまっていないか?との投げかけには頷く参加者も。最後には「子どもたちに出合わせる粒度がクリエイティブの根源を決める。魂が細部に宿る教師になろう。」という熱いメッセージで終了となりました。

3人目は北海道札幌養護学校の松本祥子(さちこ)先生。

専門に関わらずあらゆることを何でも教える、という特別支援の現場経験から「子どもたちはできないんじゃなくてやり方がわからないだけ。できるやり方を考えて一緒にやってみることが大切」と話す松本先生は、“給食のおかわりを伝えるカード”や、児童の身長に合わせた玉入れのカゴを作るなど、クリエイティブな方法で一緒にやってみる工夫の実践を紹介されました。また“自分自身がなんでも面白がり楽しむこと”を心がけているとのことで「休みの日もスキー、マラソン、神輿へ参加しています」との発言には参加者から驚きの声が上がりました。

4人目は大谷地小学校の大橋 剛先生。

大橋先生は第2回教育喫茶で店長として”ChatGPTとメタバース”をテーマに発表をしていただきましたが、今回は学校の周年行事で*生成系AIが活躍したという事例をご紹介いただきました。児童が描いた絵を歩かせたり「みらいのSapporo」をテーマにアイディアを募り、そのアイディアをもとにメタバース空間を作成したそうです。参加者からはAIの活用について「不得意なところを補ってくれる杖になる」「災害時などデジタルが使えない時のバックアップは必要」など議論が尽きませんでした。
*生成系AI…さまざまなコンテンツを生成できるAIのこと。

5人目は澄川西小学校の小森量平先生。

人とのつながりをつくることを大切にされているという小森先生は、ゲストティーチャーで卒業生を呼ぶこともあるそうです。コロナ禍で卒業式ができなかった児童のために、記念に「想い出ロケット」と題して、全長2mものプラスチックモデルロケットを飛ばしたり、「下町ロケット」のモデルとなった植松 努さんの講演会を実施したり、過去の卒業生も多く参加されたそうです。昨年には札幌市で「ロケット教室」を開くためのクラウドファディングに挑戦し、実現されました。「生徒と卒業後も繋がり続ける秘訣は?」という質問に「生徒に夢を語るようにしている。自分ができないことは人に頼ることが仲間づくりにつながっていく。」とお話をされていました。

6人目は新川小学校の小倉典彦先生。

第1回教育喫茶で店長を務められた小倉先生は、図工における良い作品とは、上手な作品やきれいな作品ではなく、「描きたいものを描くことにできる限り力を注いだ作品」「ずっと大切にしたいと思える作品」と考えているそうです。子どもたちの「描きたい/つくりたい」を実現するためには技術も必要ということで、写真のなぞり描きができるアプリケーションを活用している事例をご紹介いただきました。実際に子どもたちの「描けるかも」という自信になっているそうです。
最後に「図工は子どもの想いが表れる第二言語のようなもの。子どもたちが造形活動を通じて豊かな心を育んでいけるように心がけている。」とのコメントに参加者からも感嘆の声があがりました。

今回お話いただいた先生のどの実践にも試行錯誤と工夫があり、とても刺激的な回となりました。参加者からも活発にコメントがあり、子どもたちの可能性をどうしたら最大限引き出せるか、議論はつきません。
このように第3回「教育喫茶」も大盛況のうちに閉店となりました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

教育喫茶」では、教育に関わる先生や学生、アーティストなどが集い、色々なテーマに基いた、実験的なプログラムを作ったり、体験したりする中で、学校と芸術祭が「これからの教育」を共に考え創造するプラットフォームとなることを目指しています。

興味のある方、参加希望の方は事務局までお問い合わせください。
お問い合わせ先:operation@siaf.jp

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