SIAFスクール

教育関係者コミュニティ

第5回教育喫茶
「今、君たちは遊ぶべきです!~教育はコミュニケーションだ!そしてゲーミフィケーションだ!~」

開幕前から札幌国際芸術祭2024(略称:SIAF2024)を楽しむ「SIAFスクール」では、様々なプログラムを実施しています。今回は、教育とアートに関する課題や可能性を話し合うコミュニティ「教育喫茶」の様子をご紹介します。

11月25日(土)、札幌市資料館2階SIAFプロジェクトルームにて第5回「教育喫茶」を開催しました。今回店長(講師)を務めてくださったのは、札幌南高等学校英語科教諭の澤田大輝さんと、札幌龍谷学園高等学校数学科教諭の吉本拓郎さんのお二人です。

今回のキーワード「ゲーミフィケーション」は、「ゲームの考え方やデザイン・メカニクスなどの要素を、ゲーム以外の社会的な活動やサービスに利用するもの」。(※1)この「ゲーミフィケーション」の考え方を教育現場に取り入れ、ユニークな実践をされているお二人にそれぞれお話いただきました。

(※)引用:「ゲーミフィケーション―<ゲーム>がビジネスを変える」 – 井上明人 – (NHK出版:2012年)

写真左から吉本拓郎さん、澤田大輝さん
事例紹介 澤田大輝さん

「ブロックあそびでひらく!みえる・さわれるコミュニケーション」

澤田さんは高校で英語教諭として勤務される傍ら、ワークショップデザイナーとして「イメージしたものを形にする力」に着目した体験学習の場を各地で展開されています。ワークショップで活用するツールは誰もが知る玩具の「ブロック」。ブロック遊びを通して自分の考えや思いを形にするワークショップや、近隣の大学で教職を志す学生に向けて、高校生への指導方針をブロックを使って「みえる&さわれる化」し語り合うワークショップを実施しています。今回はその一部を参加者が体験しました。

ワーク1:「自分っぽい」ブロックを3つ選んで自由に組み、自己紹介してみましょう。

テーブルに積まれたバケツ一箱分のブロックたち。「ブロックを触るなんて久しぶり」「色々なパーツがある!ブロックも進化したな〜」といった声があがる中、参加者たちはブロックを厳選し、思い思いに組み立て始めました。ここでのポイントは、ブロック3つで「自分自身」を表現するということ。あれこれ考えているうちに制限時間があっという間に過ぎていきました。次は、席の隣同士で作品解説を兼ねた自己紹介です。作品の「色」や「形」は三者三様で、ブロックを介して自分を伝え、相手のことも知ろうとすることで会話が弾み、会場内が一気に和やかな雰囲気になりました。

ワーク2:ワーク1でできた作品をタネにして「2024年、なりたい私」をブロックで表してみましょう。

今度は大きさやパーツの数は問いません。ブロックを組み立てる感覚に慣れてきた参加者たちは制作に夢中になって、ハイペースで作品を仕上げていきました。ワークの最後にはお互いの作品について語り合い、2024年の抱負と個性豊かな作品を共有しました。
このように、澤田さんは「みえる・さわれる化」をキーワードに、老若男女が気軽に手に取れるブロックというツールを活かしてコミュニケーションを促す活動を継続されています。

事例紹介 吉本拓郎さん

「ゲーミフィケーションのすすめ」

吉本さんは、長くICT環境の整備に携わり、現在は勤務校において教科教育だけでなく探究学習や図書館教育でのICT活用にも取り組まれています。今回は学校現場において「ゲーミフィケーション」の知見を取り入れた授業の事例を紹介いただきました。

インターネットの検索だけで満足するのではなく、関連する本を手に取って情報を得る機会も作って欲しいと考えた吉本さんは、ICTと図書館の両方を活用する良さを伝える授業を生み出します。それが、課題解決にゲーム性を取り入れた「学センからの挑戦状」というワークショップです。
高校1年生に向けて図書館の施設を紹介する授業の内容を「謎解き」に置き換えました。
基本的な図書館の利用方法や検索機能の使い方を学んだあと、謎解き形式でクロスワードパズルを埋めるゲームが始まります。
問題に答えるためには、インターネットで関連する本の書名を調べ、図書館の蔵書検索をしてその本の登録番号を見つけた後に、さらに本を手に取り本文を探さなければなりません。「謎解き」に挑戦することで自然とインターネットと図書館の両方を活用する体験ができるように考えられています。この授業を受けた生徒からのアンケートには、「ゲーム中に面白そうな本を見つけた」という声もあったそうです。
吉本さんは、授業の中で自由に遊ぶ余地や場面作りのデザインをすることを大切にされています。自身が過去に脱出ゲームに挑戦した時の様々な気づきから、教科教育の枠の中でゲームをうまく活用しようと発想したそうです。授業にゲーム性を取り入れ、色々な方法で生徒の知を刺激していくことで、実際に輝く生徒がいると言います。
今回、それぞれ異なるアプローチで「ゲーミフィケーション」の考え方を授業や活動に取り入れているお二人のお話を通して、参加者からは「新たな視点から、教育を考える素晴らしい機会になった」「札幌でおもしろいことやっている方がたくさんいるんだとあらためて感じた。」といった声が寄せられました。
昨年2月にオープンした「教育喫茶」も、早いもので第5回目を無事終えることができました。「教育喫茶」では、教育に関わる先生や学生、アーティストなどが集い、色々なテーマに基いた実験的なプログラムを作ったり体験したりする中で、学校と芸術祭が「これからの教育」を共に考え創造するプラットフォームとなることを目指しています。そして、いよいよ1月20日の開幕に向けた企画の準備も進行中です。お楽しみに!

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